のえる インタビュー

人間機械 Volume 0 『穏やかな暮らし』がついに幕を開け、早いことに明日で千秋楽を迎えます。

たくさんのお客様から予想以上の反響をいただいており、充実した演劇作品に仕上がったと感じています。

特に公演アートワークについては、フライヤー公開時から「可愛い」と大好評で、シリアスでダークな本篇とのギャップに驚かれるお客様も多いようです。


その素敵なアートワークを手掛けてくださったのはイラストレーター・のえるさん。

「あの絵を描いたのはどんな人なの?」とあちこちで聞かれるので、今回はのえるさんのインタビューをお届けします。人間機械の公演と合わせてお楽しみいただければ幸いです。(主宰・針谷)


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針 谷 今回の演劇のコンセプトは、陰惨なゴシックホラーの「黒猫」を、残酷ながらも優しい物語で舞台化することだったので、とにかく宣伝美術は可愛くて取っつきやすいものにしたかったんです。かと言って、いわゆるアニメやラノベっぽい軽さに振るのも違和感があった。ちょうどいい質感のイラストレーターを探している時に出会ったのがのえるさんでした。作品を描くときはいつもどんなことを意識して描いているんですか?


のえる 私は可愛いものを見たときの「これ描きたい!」から始まります。私の一番のこだわりが女の子を可愛く描くことなので、それを第一に意識した上で、私は「現実的」な可愛らしさを重点的に意識しています。



針 谷 「可愛い女の子」っていうのは基本的に三次元なんですか。それとも二次元?


のえる 両方です! アニメや漫画を見て可愛いと唸ることもあれば、モデル雑誌や街中の女の子を見て可愛いと思うこともあります。最近ではアイドルにどハマりしてしまい、モーニング娘。の動画を毎日見てます(笑)


針 谷 のえるさんの絵はとてもキュートなんですけど、どこかにちょっとした「影」を感じさせるところもありますよね。その辺も意識的に表現してるんですか。


のえる 実は針谷さんや他の方に言われるまで、自身の絵の「影」についてはほとんど意識したことがなくて、びっくりしました。


針 谷 決してリアリティのある絵柄ではないんですけど、不思議と奥行きがあるんですよ。手触りがあるというか。光も影も含めて「可愛い」と捉えていらっしゃるのかなぁとも思ったんですけど。


のえる 最近はノスタルジックな感覚と、生活感を意識しています。これは最近ふと考え始めた事なのですが……。絵の中の女の子がファンタジーにならないよう、本当にいそうだったり、観る方の気持ちにすっと入れるような懐かしい雰囲気を大事にしているからかもしれません。そういったリアリスティックな部分に、描く女の子の「影」だったり、奥行きが現れているのかもしれません。


針 谷 今回はこっちから「部屋であやとりしてる女の子を描いて下さい」と、シチュエーションや情感を含めて、かなり細かくオーダーをしましたけど、正直なところ描きにくくなかったですか。


のえる 細かくオーダーされた時点では、針谷さんがどんなイラストをイメージされているのかはパッとイメージすることができました。でも、実際描きはじめるとそのイメージを形にすることが思ったようにいかず試行錯誤しました。描きにくかったと思います。針谷さんとお話をしてラフが決まってからやっと上手く筆も乗り、完成に至りました。


針 谷 そう言えば、構図を決める話し合いをしたんですよね。いくつか用意してくれたラフの中に、僕が当初イメージしていたものに近い構図もあったんですけど、最終的には一番予想外だった「俯瞰する構図」にしたんですよね。のえるさん自身も「この構図が一番自分にとってチャレンジ」と言ってました。


のえる 今までだと頭の中でイメージができていても描けない気がしていて、どこかに苦手意識があったんですけど、この絵を通してイメージしたものを思い通りに描けるという自信に繋がりました。今回の「黒猫」の絵を描いたことで成長できたと感じていて、その後ランドリールームの絵も描くこともできたと思っています。



針 谷 たしかに「黒猫」以後に発表された作品は、質感や奥行きが深まっているように感じます。今回描き下ろしていただいた作品で、特にこだわったポイントや「ここ見て!」というところがあれば教えてほしいのですが……


のえる こだわったポイントと見て欲しいところは一緒で、絵の中の生活感を感じてほしいです。特に細かい小物に注意をすると気付ける、女の子の二人暮らしの空気感にストーリー性を感じてほしいです。あとは可愛い猫グッズをたくさん調べました(笑)



針 谷 猫グッズは本当にかわいいです。小物から漂うストーリー性には本当に驚きました。こちらからは具体的な指示は一切していないのに、コントローラーを二つ置く発想とか。想像力を掻き立てられます。


のえる ありがとうございます。コントローラーも、たまたまなんですが猫のシルエットっぽくなっちゃいました(笑)


針 谷 本当だ(笑) それもまた可愛いですね。いつもはどんな手順で絵を描いてるんですか。


のえる 私にとって欠かせないのは、一番初めにやる資料集めです! 人一倍時間をかけて参考画像を集めている自信があります(笑) そうやって集めた新しい情報を元に、ラフを作ります。ラフや細かい小物のデザインは紙にじゃないと描けないです。この際は画材にこだわりはありません! 近くに転がってるものを使います(笑) ラフが完成したら、携帯で撮ったラフの写真をパソコンに取り込んで、FireAlpacaというフリーソフトで清書します。作業場はこんな感じです!



のえる ……写真撮るために片付けたので、作業中はこんなに綺麗じゃないです(笑)


針 谷 子どもの頃から絵描きを目指していたんですか?


のえる 小さい頃は漫画家になりたいって思っていて、それが絵を描き始めるきっかけになりました! 漫画家の夢は小さい時だけで、国を超えた引っ越しなどを理由にすぐ断念しました。また、絵を仕事にするのは難しいということで真剣には取り組まず、落書きだけをしばらく続けていました。


針 谷 では本格的に勉強をされたのは……?


のえる 実は今までで絵を本格的に習う機会がほとんどなく、自己練習が基本となっています。


針 谷 えっ。じゃあ独学なんですか。


のえる はい。高校を卒業する間近になってから初めて、周りで絵を一筋に頑張っている方々に影響され自分もやってみたいと本気で考えるようになり、今に至ります。今では、もっと早いうちに真剣に取り組めば良かったと後悔しています。


針 谷 いやいや、現時点ですでに素晴らしい作品をいくつも描いてらっしゃる。末恐ろしいですよ。今後はどのようなビジョンを思い描いてるんですか。


のえる 現時点では、とにかく絵描きとして力を溜める期間だと思っています。細かいビジョンとしましては自分のバイリンガルを武器にして、日本に留まらず海外でも活躍することを一つの指針としています。いずれは絵を描くことを生業としてフリーランスのイラストレーターとして生きる事を目標としています。フリーランスで生きていくことが達成できれば、のんびりささやかに暮らすのがゴールです。


針 谷 のえるさんの絵は国境を越えて訴求する力があると思います。一ファンとしてもっと多くの人に親しんでもらいたいです。脚本を執筆する時も、描き下ろしてもらったアートワークを眺めながら具体的なストーリーを膨らませていったんですよ。行き詰まった時に眺めると物語が少しずつ見えてくる。たぶん、それは僕だけでなく、見た人の数だけ物語が広がるということなんだと思います。ポーの原作ありきの今回の舞台ですが、のえるさんの絵にも「書かされた」感覚があります。


のえる とってもとっても嬉しいです……! 絵描きとしての冥利に尽きます!


針 谷 本当にありがとうございました。のえるさんの絵に恥じぬ舞台にします。今後もたくさんの「可愛い」を描いてどんどん活躍してほしいです。


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会場ではのえるさんに描きおろしていただいたアートワークのオリジナルグッズを販売しております! 「気になる!」という方はぜひ劇場まで足をお運びくださいませ!