宿題 #5(匿名希望)

※この文章は「宿題割引」でVOLUME 1『うみべのクロノス』を観劇した来場者によるレビューです

お名前

匿名希望

観劇日時

2018年3月25日 18時00分


ひとは舞台や映画や小説やら、なにか創作物をみたとき、なにかしらの共感点を探す生き物らしい。

今回のうみべのクロノスをみて、共感点から私が考えたことは、主に以下のふたつになる。

・お酒を言い訳にしないで関係を発展させる勇気を持ちたい

・性暴力を受けたら、被害者なのに、なんで誰にも言えないんだろう?

まずお酒の話だ。学生のころはお酒に強かった。飲んでも飲んでも、トイレに行けば排出されて、酔いがさめるから、視界がぼやけるくらいで、酔うという状態になったことがあまりなかった。酔ったとしても、笑い上戸になったり記憶をなくしたりなどの変化がまったくといっていいほどないので、酔うから本音が話せるとかコミュニケーションが円滑になるとかいう話が理解できなかった。昼間の素面でも誰とでも本音でぶつかることができた。

でもタイトル。結婚して飲めなくなったのである。夫がチョコレートボンボン1個レベルで頭痛がしたり吐いてしまうほどの体質的アルコールNG人間だから、わざわざ家で飲まなくなったのに加え、妊娠もして、授乳が終わるまでのおよそ1年半、禁酒をしたからなのだろう。200mlそこらで、酔ってしまうようになり、酔うと敷居が下がるようになった。お酒を飲むから障壁なく愛を伝えられる。飲まないと人見知る。アルコールに頼らないと勇気が出ない、アルコールに頼って言い訳するような、今まで見下していた大人になってしまった。

学生の頃に打ち解けていた友人と、久しぶりに会うのに、昼からお酒が飲めるランチを探す。職場で仲良くなって、もっと仲良くなりたい人を、夜に「飲み」に誘いたいと思う。

お酒に弱くなったのと同時に、人間関係にも弱くなった。なんでだろう。社会人、妻、母、と立場が増えたから?学生の頃のように人と過ごす時間を長く持てないから?お酒飲むんですか?と聞いて、体調や体型のために控えていると言われたら、打つ手がないよ。どうすればあなたと距離が縮められる?抱いてほしい気持ちを、どうすればわかって、すくいあげてくれる?

そうやって好きな人と触れ合いたい気持ちがないのに、いきなり性の目を向けられる暴力に、私は幾度となく悩まされてきた。現代の日本人女性は、統計的に、人生で2度はそういう目に合う、と言われている。私はというと、8回だ。4倍だ。全てありありと覚えていて、毎回、目の前に凶器があれば命を奪うことをまったくいとわないほどの殺意と、自分の存在を削られ、えぐられた深く強い悲しみで精神がズタボロになる。男という性そのものが憎らしく、何度、加害してきた当人でない友人や、恋人や、父親にかわりに怒りをぶつけてきただろう。死ね死ね死ね。

初めては小学2年の初夏だった。ランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶり、お気に入りの朱色のトレーナーと、ピンクベージュのパンツ姿で、いつも通り下校していると、背後に違和感を感じた。そのまま住む団地に入り、エレベーターのボタンを押す。待っていると、上下ともにブルーのデニムのシャツとジーンズ、色白の肌、口元にホクロがあり、ツヤツヤと湿気のあるおかっぱ頭の、大学生くらいの男が入ってきた。不穏な空気を感じる。これは、危険だ。私は、エレベーターが来ても、乗らなかった。男が乗り込む。乗らないの?と聞かれる。友達待ってるから先に行ってください、と震えた声で言った。男は先に行った。なんだ取り越し苦労か。ここに住んでいる人か。そうホッとして、またエレベーターのボタンを押した。無人の箱に乗り込んだ。

二階のドアが開き、男が入ってきた。逃げ出した。悪い予感は的中した。私は馬鹿だ。なんで遠回りして遠くの階段から上がらなかったんだ。友達の家や近くの交番に逃げ込まなかったんだ。緊急の時にと渡されていたテレホンカードと電話番号のメモを使って親に連絡をしなかったんだ。一瞬にして色々な後悔が襲う。とりあえずいちばん近い逃げ場は自宅。そう判断して階段を駆け上がる。男が追ってきた。抱きすくめられた。どうして降りるの?!と非難されながら胸と股を触られた。ちっとも声も力も出ない。ママが待ってるから!ママに怒られるから!ごめんなさい!となんとか言って、このままじゃ本当に死ぬ、全力で階段を上がり、震える手で自宅の鍵をあけた。カツン、カツンと鍵と鍵穴がぶつかる音がする。なかなか入らない。こうしている間にも追いかけてくるかもしれない。ようやく家に入り、ドアを閉め鍵をかけた。鍵っ子だから、ママなんて待っているわけがない。全身が気持ち悪い。いつも楽しみにしている大好きなテレビも、ちっとも面白くない。母が帰ってきた、いつもならお皿三杯は食べる大好きな夕食のカレーも、一皿の半分がやっと。母になにかあったの?と聞かれても何も言えなかった。そうしてしばらく、生きているのか死んでいるのかわからない日々が続いた。心配されても、なんにもないよとしか言えない。誰といても、ふつうに話すことができず、苦しい。いつも自分の心を支えてくれる本なら少しは気がまぎれるかもと、入った図書室で、担任の先生と女子が話していた。あのときと同じ違和感がする。聞き耳を立てると、彼女は男に同じことをされていた。私もです、とそのときようやく言えた。

それから私は、男、という生き物を憎み続けた。あまりの憎らしさに、支配下に置いて、いつでも上に立てるよう、男に好かれ、懐柔する方法を、長い時間をかけて学んだ。そうしているあいだにも、運が悪いことに、電車内での痴漢、街を歩いていて通りすがりに言われる卑猥な言葉、明らかに人間関係を築く気のないナンパ、突然の非通知の電話に出るとしている自慰行為。等々、性暴力に合い続けてきた。

全てに共通することは、何も悪いことなどしていないのに、反論がまったくできないことだ。

立ちすくんでしまう。突然の暴力に。脳の思考が止まる。なんとか逃げ出して、思考が正常に戻ると、なぜあのとき、暴言や暴力を同じようにふるって、相手を攻撃しなかったのか深い後悔に襲われる。通法して、社会的に殺したかった。もしくは自分が返り血を浴びてでも、その肉体を切り刻んでやりたかった。死ね死ね死ね。

その後悔、殺意、悲しみを、作中のヒバナが持っていると思えなかった。叫びは薄ら寒くもあった。演じていた役者にそういった経験がないのか、もしくはあるけど、力量がないのか。それとも脚本に問題があるのか。少女の世界の闇、というカテゴリーを描きたいだけに見えた。そんなエゴで、架空の世界だとしても、ひとりの女性をえぐるな。酒を飲んだくらいで、義理の娘を犯す権利を与えられた男にも、腹が立つ。そんな手段でね、簡単に正当化してるんじゃないよ、と書き手に怒りが湧いてきた。

そう、前作にも感じていたことだ。ただそのカテゴリーを作りたいだけに見える。そこに理由が見えないのだ。その理由があれば、カテゴリーだけで成立するほどの本にもなりきれる。

針谷顯太郎ってこんなものだった?正直つまんないよ。もっと人生削った芝居をみせてください。

以下その他のダメホメです

・セリフで説明しすぎ。もっとお客を信用していいと思う。

・なんで姉妹にそこまでの絆があるのかわからない。

・幽霊?のような女の子の存在を活かしきれてない。いなくても成立する話だった。

・メンヘラとかクソとか強い言葉にはリスクがある。観客を遮断してしまう。その言葉でなければいけない意味が見えず、本に関して雑な印象を受けた。

・ほんとによかった!のほんと、が流れてた。流れるセリフは削るべき

・照明は手放しで褒めたい

・舞台上での動きや待ちの姿勢のとき、なぜそこにいるのか違和感がないのがすごいと思った。

以上です。